作品リスト

Eclosion „エクロージョン“ (2005)

ハープと9チャンルのライヴエレクトロニック
EDIZIONI SUVINI ZERBONI – MILANO
AUDIO

イルカムにて制作
初演 2005年10月15日
イルカム エスパス プロジェクション
演奏 : クリストフ ソニエー
12:15

 ハープと電子音響を組み合わせたこの作品の制作を通して、私が最も強く実感したことは音がエネルギーを持った有機物であること、つまり音が生きているということでした。全ての音が、それぞれの立ち上がりと衰退(Attack, Decay,)、持続 (Sustain)、減衰(Release)、からなる固有の状態の変化を持っているという事実を改めて認識したとき、私にとって作品を作る意味とは、様々な性質をもつ個々の音という細胞を扱って、10分であれば10分の長さを持つ生命体を生み出すことだと強く思いました。これは今も私が作曲をする時の原点となっています。
 
 ハープは、豊かな質感を持つ表現力豊かな楽器です。ハーピストの絃の弾き方、タッチにより産みだされる様々な音色とそこから引き出される音楽的性質、あるいは、絃をこすることによって生み出される、何か触感に訴えてくるような音。ペダルによるグリッサンドやノイズ。ハープが奏でる様々な音の性質をライヴエレクトロニクスによって、より鮮明に浮かび上げることを意図しました。また3つの異なる高さに設置された9つのスピーカをピラミッドを構成するように設置し、音によって空間をいかに使うかということを作品の大切な構成要素のひとつとして取り扱っています。層としての音、自由に空間を動く線としての音、私自身が内に感じている目には見えない動きやうねりを体感して頂ければ幸いです。
 

タイトルの „Éclosion“  はフランス語で、開花、孵化、あるいは誕生などを意味します。
泥沼の底に発芽し淀んだ水を吸収しながら成長しある日水面に美しい花を咲かせる蓮の開花の瞬間、あるいは永い間、親鳥に暖められた卵がふ化しその殻をわって小鳥が誕生する瞬間といった、流れの中に宿るその生命力と命の誕生を表現したいと思いました。
私自身が感じている生きることの喜び、ある状態からさまざまな過程を経ることによって昇華に到達する様相を音で表現したいと願った次第です。
 
Éclosion / エクロージョン は2005年10月14日に、パリのイルカムで初演されました。また同年に他界された私の恩師である作曲家、平義久先生へのオマージュです。