作品リスト

Monochromer Garten IV„単彩の庭 IV“ (2012)

三十絃箏独奏のための
EDIZIONI SUVINI ZERBONI – MILANO

二世 宮下秀冽氏のために
二世 宮下秀冽委嘱
初演:2012年11月3日 東京証券ホール

三十絃箏独奏曲
単彩の庭 IV / Monochromer Garten IV (2012)

『単彩の庭 IV』は、独奏から三重奏までの小さな編成のための作品群『単彩の庭 』シリーズの第4作目です。
このシリーズでは、日本庭園の持つ特徴と美感、その作庭過程と構築を音と時間によって再現することを意図しています。

『銀世界』『夜』『雪に反射する光』『静寂』『空間』。。。ある冬の夜、京都の寺の窓からのぞいた庭の風景は、あたかも黒と白、そのコントラストが織りなす墨絵のようでした。
その景色の美しさは、私をハッとさせるだけでとどまらず、「何故、そこに美を感じるのだろう?」「この庭の美を構成する要素は何なのだろう?」という根本的な問いを投げかけてきました。

哲学者であり仏教学者でもあった‪久松真一‬氏(1889-1980)はその著書の中で、
日本文化の美術(ファインアート)の特徴として次の7つの性格を挙げています。
1)不均斉
2)簡素
3)枯高
4)自然
5)幽玄
6)脱俗
7)静寂
この七つの性格は「そのいずれを欠いても完全とは言えない」もの、また「本来別々のものではなくて一つのものの属性である」としています。

『単彩の庭 』シリーズでは、音素材と時間により音楽を作り上げる作曲のプロセスを、石や植物によって空間を構築する日本庭園の作庭として捉えています。
選び抜かれた僅かな素材により 豊かな空間を構築し、作り手の精神世界を表現する。。。そのような作業を音を通じて行いたいと思ったからです。
そして、これらの一連の作品群は、一作一作がより深い音世界に到達するための、終わる事の無い挑戦でもあります。
二世•宮下秀冽氏の委嘱作品である『単彩の庭 IV』では、三十絃箏の持つ『深く低い響き』『豊かな音色』, 太く長い絃から奏でられる『余韻』『イントネーション』『力強さ』といった特性を音素材として生かしたいと思いました。
そして、それらの素材の構築により、私なりの美の世界を作り上げ、より深遠なる部分に到達したいと試みたものです。
『単彩の庭 IV』は、二世•宮下秀冽氏に捧げられています。