パーカッションコンチェルト (2020-2021)
EDIZIONI SUVINI ZERBONI MILANO
SCORE
Percussion solo: Bass Drums, 4 Bg., Snare drum, Hyoshigi, 4 Mokusho, Holz-trommel, Tt., 7 metal plates, 3 Coils, 5 Japanese Rins, Japanese crash cym., Rins Otsuka
3.3.3.3. – 6.4.3.1. – Tp. – 4 Perc.: [I: Bass drum, Snare drum, 2 Japanese Rins, Claves, 2 Mokusho, Xyl., Ps., Crot., Mark tree, Acme Siren, Sleigh Bells – II: Snare drum, Claves, 2 Mokusho, Mr., Tt., Thunder sheet, Ps., Tb., Mark tree, Metal chime, Acme siren, Sleigh bells, Vibra-slap – III. Snare drum, 4 Bg., Claves, 2 Mokusho, Tt., Thunder sheet, Glock., Vibr., Mark tree, Metal chine, Acme Siren, Sleigh bells, Vibra-slap. IV: Bass drum, 3 Snare drums, Lion’s roar, Claves, 2 Mokusho, Sizzle Cymbal, Cowbells, 5 Javanese gongs, Mark tree, Acme siren, Sleigh bells] – Ar. – Pf./Cel. – A.: 16.14.12.10.8.
パーカッションコンチェルト (2020-2021)
打楽器とオーケストラのための
ノルトライン・ヴェストファーレン州文化・科学省助成、フェスティバル・エッセン・ナウ!による委嘱
協力:大塚製作所
アレッセイ・ゲラシメツ氏に捧ぐ
打楽器独奏:アレッセイ・ゲラシメツ
指揮:ジョナサン・シュトックハマー
デュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団
初演 : 2022年11月4日、エッセンフィルハーモニー、エッセン・ナウ音楽祭
演奏時間 : 約20分
録音:西ドイツ放送
パーカッションは、私にとって無限の可能性を秘めた、興味が尽きることのない楽器群です。
打楽器は、叩く、擦る、引っ掻く、弾ませる、打ち合わせる、といった誰もが日常生活で行っているジェスチャーを用いて演奏する
唯一の楽器です。
打楽器奏者アレッセイ・ゲラシメス氏のために、「パーカッションコンチェルト」を作曲してほしいという委嘱をも受けた時、アレッセイ・ゲラシメス氏がステージ上で見せる魔法のような演奏技術、奏でる美しい音、しなやかな動き、エネルギー、集中力、柔軟性、存在感溢れる生き生きしたオーラといった特性を反映させた作品にしたいと思いました。
ソリストの楽器編成は、 木、金属、皮(膜鳴楽器)楽器の3つのカテゴリーで構成されていて、拍子木、妙鉢(お寺で使われる合わせシンバル)凛など寺院の法要で使われる楽器も含まれ、私が幼少時に聞いて育った
仏教楽器の奏方をています。
「打ち合わせる」という動作とそれによって生まれる音の動きは、重要な音楽素材の一つで、作品を通して異なる楽器で何度も繰り返し行われます。
曲は、拍子木を両手に1本ずつ持ったソリストがそれを打ち合わせ、鋭い木の音を会場に響かせることによって始まり、オーケストラの打楽器とティンパニーが、ソリストの奏でる音素材やジェスチャーを模倣したり発展させながら、オーケストラ全体に浸透させ、巨大な打楽器群(メタ楽器)を構成します。
ソリストから発せられる音のエネルギーは、木、金属、膜鳴(皮)楽器を介して、常に音色を変化させながら、オーケストラに伝搬され、より大きく、より色彩豊かで躍動感溢れたものへと進化していきます。
最後になりますが、このパーカッション・コンチェルトのために、私が選んだ22個の微分音からなる凛の一連を、大塚製作所から制作提供していただきました。大塚凛は、銅合金を削り出して作られた小さな鐘で、純粋で澄んだ明るい音色と長い余韻を持ちます。僅かに音程の異なる隣り合う凛がなった時、そこからうねりが生まれます。大塚製作所に心からの感謝を記します。
パーカッションコンチェルトは、アレッセイ・ゲラシメツ氏へ捧げられた作品です。
(ケルンにて、2022年春、岸野 末利加)