Lamento/哀歌 (2013)
福島民謡をもとにした 二台のバイオリンのため「ラメント/哀歌」
EDIZIONI SUVINI ZERBONI - MILANO
AUDIO
初演:レトリカ ヴァイオリンデユオ,エンジェルスタジオにて。
色彩豊かな四季や美しい景色といった自然からの恩恵とを受ける一方、地震や火山噴火、台風などの自然の脅威に対峙し共存してきた日本人の歴史を思うと
「Symbiosis (共生)」というテーマは私にとってとても自然なものでした。
この作品の中では、自然界に存在する衝撃はピチカートで、叩きつけるような荒々しいエネルギーの流れは、弓の棹(木の部分)で絃をはじくことによって表現しています。
相 対する人間を表すモチーフには、福島県に伝わる民謡「相馬流れ山」の節を引用しました。故郷を偲んで朗々と歌い上げるこの歌からは、流れゆく時と切ない望 郷の想いが伝わってきます。「ラメント」では、この民謡を一人一人の心の中に生き続けるふるさとの原風景、生きていく上で心の支えとなるものの象徴として 扱い、セピア色を思わせるハーモニクスの淡い音色で表現しています。
この作品を作曲する間、自然と人間の「共生」を思う一方で、決し て人間が「共生」出来ないものの存在を思わずにはいられませんでした。それは、震災時に起こった原子力発電所事故の問題です。原子力発電によりエネルギー の恩恵を受けそのメリットばかり追い求めてきた結果、地震の多い日本国内にたくさんの原子炉が出来ました。しかし、一度事故が起きしまった時に払う代償は あまりにも悲惨です。自分たちの手に負えないものを作り利用し事故を起こしてしまった。。。この事実を思うととても深い 悲しみと憤りを感じます。
二台のバイオリンのための「ラメント/哀歌」を、2011年3月11日の震災で地震、津波の被害と不幸にして起こってしまった原子力発電所事故の被害にあった方々、そしてそれ以降、痛みを抱え続けているすべての方々に捧げます。
ケルンにて、岸野 末利加